| 1. エネルギー代謝亢進作用を有する食品成分の探索と作用メカニズムの解析 |
肥満は,生活習慣病の大きな危険因子である.トウガラシ辛味成分のカプサイシンは,カプサイシン受容体(TRPV1)を刺激し,アドレナリン分泌促進を介して体熱産生(エネルギー代謝)を盛んにし,体脂肪の蓄積を抑える作用をもつ.TRPV1を活性化する物質には同様の作用があると期待している.食品中のエネルギー代謝亢進作用物質を見出すために,TRPV1の発現細胞を作成し,TRPV1を活性化する食品成分のスクリーニングを行っている。現在までに,辛味が弱くても高活性な化合物をいくつか見出している.また、ワサビの辛味化合物AITCに応答する受容体TRPA1を活性化する化合物も同様に探索し、複数のアゴニストを発見した。
活性化合物の作用評価法および作用メカニズム解析法として、細胞レベルでは細胞内Ca2+濃度の測定や電気生理学的手法であるパッチクランプ法での細胞内外の電位差測定を用い、生体レベルでは血中アドレナリン濃度の測定や摂食実験による体脂肪量の測定を用いている。 |
| 2. 体温調節に関わる食品成分の探索と作用メカニズムの解析 |
| 西洋で伝承されているハーブ等の薬草や,東洋の薬膳でいう温熱・寒涼性食品には体温調節や身体の調子を整える効果がある.しかし,これら食品の機能成分とその作用メカニズムについては不明な点が多い。動物の感覚神経には温度感受性受容体群(TRP温度受容体ファミリー)が存在しており、これらが食品による体温調節に関わっていると予想される。TRPファミリーを発現した培養細胞を樹立し、その受容体活性を指標にして,作用成分の特定ならびに作用メカニズムの解明を目指している. |
| 3. トウガラシ辛味関連化合物の生合成に関する研究 |
当研究室で甘味種トウガラシ中に含まれるカプサイシンと非常に構造の類似したカプシエイトの構造を決定した.カプシエイトは無辛味でありながらTRPV1を強く活性化させエネルギー代謝亢進作用を示すことから,現在,新たな抗肥満成分として注目されている.トウガラシ果実内でのカプシエイトの生合成経路は完全には解明されていないことから、当研究室では,放射性同位体ラベル化した中間代謝物を用いたin
vivoトレーサー実験を行い,生合成経路の一端を明らかにしてきた.現在は,有機合成した非放射性安定同位体を用いたLC-MS測定系の構築を行っており,同位体の植物体内代謝を解析することにより生合成経路全容の解明を目指している.
生合成経路に関与する酵素をコードする遺伝子・酵素の解析を進めている.トウガラシの辛味品種と無辛味種との遺伝調節は不明であるが,カプサイシン・カプシエイト生合成分岐の鍵酵素の性質を明らかにすることにより,トウガラシの辛味発現を自在に調節し,カプシエイトを高含量に蓄積する品種の開発を目指している. |
| 4. 苦味受容体を用いた味覚修飾物質の評価 |
| ヒトには25種類の苦味受容体があるが、多数存在する苦味物質にたいしてどの苦味受容体が応答するか明らかになっているものは少ない。当研究室では、茶カテキンに応答するヒト苦味受容体を探索し、カテキンに応答する受容体を見出した。現在、この受容体を用いた茶カテキン苦味の評価系の構築を目指している。 |